グループホームと老人ホームの違いは?入居者・サービス・費用を比較
高齢の方が生活する施設を探す際は、グループホームや老人ホームなどさまざまな種類の中から希望に合ったものを選ぶことが大切です。施設によって生活の仕方や受けられるケアの内容が変わるだけでなく、入居時や月々にかかる費用も大きく異なります。
当記事ではグループホームと老人ホームの特徴や、サービス・費用の違いを詳しく解説します。老後の時間を有意義に過ごせるよう、グループホームや老人ホームがどのような施設が知り、施設選びにぜひお役立てください。
1. グループホームと老人ホームの特徴は?
高齢者が利用できる施設には、さまざまな種類があります。入居を検討するにあたって、施設ごとの特徴やサービス内容の違いを正しく把握しておくことが大切です。
まずはグループホームと老人ホームとはどのような施設なのか、それぞれの特徴を解説します。
1-1. グループホーム
グループホームとは、認知症の高齢者が自立しながら共同生活を送るための施設です。
【グループホームの特徴】
- 正式名称は「認知症対応型共同生活介護施設」
- グループホームと同一自治体に住民票がある人しか入居できない
- 5人~9人程度の少人数で共同生活を送る
- 生活機能や認知機能の改善、自立した日常生活が営めるようにすることが目的
出典:厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」
グループホームは、認知症ケアに特化した共同生活施設です。認知症を専門とするスタッフのサポートを受けながら、家事などを能力に応じて分担しながら生活します。
運営母体は民間企業・社会福祉法人・医療法人などさまざまですが、市区町村が指定・監督している地域密着型サービスに位置付けられます。営利目的の度合いは低く、あくまでもリハビリや自立を目的としたケアがメインとなる事に加え、居住地域以外の方の入居はできません。
認知症以外の医療ケアには対応しているかは施設によって異なるため、あらかじめ確認しておくことが大切です。
1-2. 老人ホーム
老人ホームとは高齢者向けの入居施設で、プライバシーに配慮した生活が送れるのが特徴です。介護サービスの度合いや医療ケアの内容に違いがあり、自分の状態にあった施設選びが求められます。
【老人ホームの種類】
- 特別養護老人ホーム
寝たきりや重度の認知症など常時介護が必要と判断され、家庭での生活が困難な人を対象とした施設です。入浴・排泄・食事の介護などの日常生活上の世話に加え、機能訓練・療養上のケアが受けられる他、終身利用ができるのも特徴です。 - 介護老人保健施設
在宅生活への復帰に向けたリハビリを行いつつ医療・介護ケアを受けられる施設で、長期入院などをしていた高齢者を対象としています。看護や機能訓練などの必要な医療に加え、日常生活を自力で行えるよう短期集中的に訓練します。 - 介護医療院
長期的な医療ケアと介護が必要となる場合に入所する施設です。他の老人ホームに入居していたものの、病気の進行により退去が必要となった場合の転居先として選ばれる傾向にあります。リハビリ専門のスタッフだけでなく、栄養士・薬剤師・ケアマネージャーなど幅広い医療ケアが期待できます。 - ケアハウス
低所得階層に属する自宅生活が困難な高齢者を対象とした施設で、生活や食事の支援が受けられます。費用を抑えて安心した生活を送れる選択肢して人気が高く、入居待機者が多いのが特徴です。 - 有料老人ホーム
有料老人ホームは、高齢者が入居し食事や生活サービスが提供される施設です。介護付き・住宅型・健康型の3タイプがあり、それぞれ入居条件やケアの範囲が異なります。
老人ホームは、入居者が満足度の高い生活を送ることを目的とした施設であり、さまざまなサービスが受けられます。手厚い生活支援や介護ケアはもちろん、食事や洗濯なども任せられ、入居者が楽しめる設備やレクリエーションも豊富な施設もあります。
2. グループホームと老人ホームの入居者の違い
グループホームと老人ホームとでは入居条件や退去となる理由が異なるため、入居者に違いがあります。
入居条件・退去条件・入居者層の3つのポイントから、グループホームと老人ホームそれぞれの条件や特徴の違いを確認しましょう。
2-1. 入居条件
グループホームと老人ホームは、誰でも無条件で入居できるわけではありません。それぞれ入居条件が設けられており、条件に合った人だけが入居できます。
グループホームの入居条件として、以下が定められています。
- 65歳以上
- 要支援2以上の認定
- 医師に認知症の診断を受けていること
- 集団生活を営めること
- 施設と同一市区町村に住民票があること
グループホームは認知症の患者を対象とした施設であるため、医師からの診断や要支援認定が求められます。その上で、他の入居者と交流を図り自立した生活を目指していけることが条件です。
一方、老人ホームは種類によって入居できる条件が異なります。条件として、主に以下の点を確認されます。
- 入居者の年齢
- 要支援か要介護か
- 医療依存度
- 保証人、身元引受人がいるか
- 資産を含めた収入はどの程度か
特に介護度については、特別養護老人ホームは原則要介護3以上など、施設によって決められているため、入居者の介護度合いや医療依存度に応じた施設を選びましょう。また、将来的に費用の支払いが滞らないよう、収入や資産・保証人の有無が条件に含まれることもあります。
2-2. 退去条件
グループホームと老人ホームでは、入居後に退去や転居せざるを得なくなるケースが多々あります。入居時には、退去条件についてもしっかりと理解しておきましょう。
主な退去条件
- 入院などで長期間不在にする場合
- 迷惑行為や施設の安全に支障をきたすと判断された場合
- 共同生活が困難になった場合
- 利用料の支払いが困難
- 要介護度や医療依存度が変化した場合
グループホームと老人ホームでは、主な退去条件に大きな違いはありません。症状の悪化や身体状況が変化し、施設の対応力を超える手厚いケアが必要となってしまうと、退去や転居が求められることがあります。
2-3. 入居者層
グループホームは、認知症を発症した70代以降の高齢者が入居しているのに対し、老人ホームでは幅広い層の人が利用しています。
グループホームは認知症に特化したスタッフがいるものの、介護や医療ケアは専門ではありません。手厚いケアが必要となった場合は転居が求められることもあり、自立した生活を送れる方が多く入居しています。
一方、老人ホームは施設によって幅広いケアやサービスが受けられるため、入居者の層もさまざまです。
3. グループホームと老人ホームのサービスの違い
グループホームと老人ホームとでは受けられるサービスにも違いがあります。自分が必要としている介護・医療・生活のケアやサポートが受けられる施設を選んでください。
グループホームと老人ホームそれぞれの、提供サービスの違いを学びましょう。
3-1. 受けられる医療
グループホームで受けられるのは、介護職員による医療的ケアのみであることが一般的です。一方、老人ホームの中でも介護職員に加え看護師が在籍している施設では、医療行為が受けられます。
受けられる医療の違い | |
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グループホーム | 老人ホーム |
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介護職員であっても、特別な研修を受けた職員は一部の医療行為を担うことが可能です。しかし医療的ケアに対応できるグループホームは全国的に見ても多くはありません。
3-2. 介護体制
グループホームや老人ホームでは、介護職員などの人員配置が法律により決められています。
人員配置の基準 | |
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グループホーム(1ユニットあたり) | 有料老人ホーム |
介護職員 日中:利用者3人に対して1人以上 夜間:1人以上 計画作成担当者:1人 管理者:1人 | 介護職員 要介護者3人に対して1人以上 看護職 入居者30人迄は、1人以上 生活相談員 要介護者100人に対して1人以上 機能訓練指導員:1人以上 ケアマネジャー:1人以上 |
利用者3人に対して介護職員1人の体制は「3:1」と表記します。施設情報や運営規定に記載されている人員体制は、このように比率で表記されるため覚えておきましょう。
グループホームは、ユニットと呼ばれる共同生活を送る上でのグループごとに人員を配置しており、すべての施設に対して共通の基準が定められています。
老人ホームの人員配置基準は、施設の種類によって異なり、一律ではありません。上記の表は、有料老人ホーム、ケアハウス、養護老人ホームでの人員配置基準です。また、利用者全体の人数で人員を配置するという点にもグループホームとの違いがあります。
3-3. 生活支援
生活支援の内容は、グループホームと老人ホームで大きく異なります。
生活支援の違い | ||
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グループホーム | 老人ホーム | |
食事 | △ 分担制(スタッフによる介助有) | 〇 食事提供+必要に応じた介助 |
洗濯、掃除 | △ 分担制(スタッフによる介助有) | 〇 職員が行う(自身で行うことも可) |
入浴、排泄 | 〇 必要に応じて介助 | 〇 必要に応じて介助 |
その他 | ・配膳や片付けも自分たちで行う ・能力の範囲での自活が求められる | ・買い物代行 ・銀行、納税など手続き代行 ・郵便や宅配の取り次ぎサービス |
グループホームは、自立した生活を目指すリハビリも兼ねた施設であり、スタッフや他の入居者と協力して生活をしていく場所です。そのため、介助を受けながらできることは自分たちで行います。
一方で老人ホームは、入居者が快適に過ごせるよう生活支援サービスや介護ケアが充実しています。
3-4. レクリエーション
脳機能・身体機能の活性化のため、多くの施設で積極的なレクリエーションが行われます。活動内容は、グループホームと老人ホームに大きな違いはありません。
主なレクリエーション |
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グループホームではスタッフが決めた活動をユニットごとに行うのが一般的です。一方で老人ホームでは全体で行う活動に加えて、サークルや習い事のようなイメージで個々に自分の好きな活動ができる施設もあります。
3-5. 看取りケア
看取りケアとは、死が間近に迫っている人に対して穏やかに最期を迎えられるように身の周りをケアすることです。具体的には、部屋の清掃や身体のふき取り・口腔ケア・職員による見守りなどがあげられます。
看取りケアについては、グループホームと老人ホームでは対応が大きく異なります。
グループホームは、自立した共同生活が基本となるため、看取りケアに対応していない施設が大半です。一方、老人ホームは終身型の施設であれば、看取りケアを問題なく受けられます
4. グループホームと老人ホームの費用の違い
グループホームと老人ホームには、利用するために初期費用と月額費用がかかります。具体的な金額は施設によっても異なりますが、相場を知っておくことで適切な施設選びができるでしょう。
グループホームと老人ホームそれぞれの、初期費用と月額費用について解説します。
4-1. 初期費用
グループホームや老人ホームでは、入居時に初期費用や入居金という名目でまとまったお金を払う必要があります。
初期費用の相場 | |
---|---|
グループホーム | 老人ホーム |
10万~20万円 | 0円~高額な施設までさまざま |
グループホームでは、初期費用は「保証金」や「入居一時金」と呼ばれます。退去時は手続き費用や入居時の個人スペースの修繕や清掃時にかかる必要経費以外が返還金として戻ってくることも少なくありません。相場は10万~20万円ですが、施設により異なり、中には50万円程度かかる施設もあるため事前に確認をしましょう。
一方、老人ホームは民間施設か公的施設か、民間施設の中でもどのような目的の施設かによって初期費用は大きく異なります。金銭的な負担が少ない施設もある一方で、ホテルのようにサービスが充実している施設ではそれだけ初期費用も高額になります。
また老人ホームでは、入居時に初期費用の30%程度を初期償却として扱い、残額は想定居住期間内に毎月均等に償却される方式が一般的です。つまり、長く利用するほど返還金が少なくなるという仕組みになっています。
4-2. 月額費用
月額の費用は、グループホームと老人ホームともに、施設により違いが大きく出る部分です。一般的な傾向としては、受けられるサービスが充実するほど費用も高額になります。
月額費用の相場 | |
---|---|
グループホーム | 老人ホーム |
15~20万円 | 20~50万円 |
【内訳】 居住費、食費、雑費・・・15万円前後 介護サービス費・・・2~3万円 サービス加算・・・必要に応じて月に数千円程度 | 【内訳】 居住費、食費、管理費・・・15万円~ 介護サービス費・・・2~3万円 サービス加算・・・必要に応じて月に数千円程度 医療費(薬代、入院、往診)・・・必要に応じて |
上記はあくまでも最低限の費用相場であり、衣類や嗜好品、個人で使う消耗品などの費用は含まれません。
5. グループホームに向いている人の特徴は?
グループホームに向いている人の特徴は、下記の4点です。
- 自立していて、自分の身の周りの事は積極的に行いたい人
- 落ち着いた生活を送りたい人
- コミュニケーション能力があり人と関わるのが好きな人
- 住み慣れた地域で暮らし続けたい人
グループホームでは共同生活を送るため、スタッフや他の入居者と協力しながら日々の生活を送る必要があります。アットホームな雰囲気の中での共同生活が苦ではなく、人と人との関わりを「楽しい」と前向きに感じられる人にぴったりの施設でしょう。
一方、生活するために手厚い介護ケアや医療ケアを必要とする人や充実したサービスの中で快適な生活を送りたい人は、老人ホームへの入居がおすすめです。
6. 老人ホームに向いている人の特徴は?
老人ホームに向いている人の特徴は、下記の4点です。
- 日常的に適切な医療ケア、介護ケアが必要な人
- サービスが充実した施設で、快適な生活を送りたい人
- イベントなどを楽しみたい人
- 金銭的に余裕のある人
特に有料老人ホームは、施設側がサービスを提供する場所です。自由度が高く快適に過ごせるという利点がある反面、医療体制やサービスの充実度によっては金銭的な負担が大きくなるため注意が必要です。
寝たきりや重度の認知症など他の高齢者用施設に入れない人でも、老人ホームの種類によっては受け入れが可能です。自分の心身の状態にあった適切なケアを日々受けながら安心して生活できる点が大きなメリットでしょう。
一方で、患っているのが認知症のみで医療的ケアを必要としない人や、より自立的な生活を送りたい人はグループホームへの入居がおすすめです。
まとめ
グループホームと老人ホームは、高齢者が生活する施設であるという共通点はあるものの、入居条件や受けられるケアなどは異なります。グループホームは認知症の進行を遅らせるためのケアや自立した生活を目的としており、入居者は認知症を患った方です。一方老人ホームにはさまざまな種類があり、施設によって受けられる医療的ケアや入居者層が異なります。より自分に合った施設を見つけたい場合は、老人ホームを検討するとよいでしょう。
いずれの施設を選ぶ場合も、入居時には事前に費用やサービスについて調べることで、充実した老後を送れます。