介護度とは?要支援・要介護の違いと受けられる介護サービスを解説
地域の介護サービスを受ける際は、最初に介護度認定を受ける必要があります。介護度とは、生活する上でどの程度介助が必要かを示すもので、介護度によって受けられるサービスも異なります。
当記事では、それぞれの介護度の解説と受けられるサービス、介護度の認定方法を詳しく解説します。介護度によって入居サービスを受けられるかどうか異なるため、介護を受ける方が適切な介護サービスを受けられるよう、介護度について適切な知識を身につけましょう。
1. 介護度とは?
介護度とは、高齢者の方など、介護を必要とする方がどの程度の介護量を必要とするかを表す指標です。介護度(要介護状態区分)は、下記のような要介護認定等基準時間を用いた要介護認定(要支援認定)によって判定されます。
◆要介護認定等基準時間の分類(5分野)
直接生活介助 | 入浴介助・排泄介助・食事介助 |
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間接生活介助 | 掃除・洗濯といった家事援助など |
問題行動関連行為 | 徘徊がある場合の探索活動、不潔な行為への処理など |
機能訓練関連行為 | 歩行訓練や日常生活訓練などの機能訓練 |
医療関連行為 | 褥瘡(じょくそう)の予防や処置などの診療補助、輸液の管理 |
出典:厚生労働省「(参考(3) 介護保険制度における要介護認定の仕組み)」
介護度は「要支援」と「要介護」の2種類に大きく分けられます。要支援は1~2、要介護は1~5までの区分があり、介護の必要度合いに応じた介護サービスを受けることが可能です。ここでは、要支援と要介護のそれぞれの区分や制度の内容について詳しく解説します。
1-1. 要支援とは
要支援とは、日常生活を送る上での基本的な動作はほぼ自分で行えるものの、負担の大きい家事などにおいて多少の支援が必要な状態であることを指します。適切な支援や介助を受ければ、要介護状態への進行を予防・抑制できるでしょう。
要支援は、介護を必要とする方の状態に応じて「要支援1」「要支援2」の2つの区分に分けられます。ここでは、要支援1や要支援2と判定される基準や状態のめやすについて確認しましょう。
要支援1 |
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要介護認定等基準時間が25分以上32分未満、またはこれに相当する状態と判定された場合に認定される区分です。日常生活動作はほぼ自立しているものの、掃除や洗濯など一部の家事で見守りやサポートの必要性があると考えるとよいでしょう。 |
要支援2 |
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要介護認定等基準時間が32分以上50分未満、またはこれに相当する状態と判定された場合に認定される区分です。身体機能の低下により、日常生活を送る上で部分的な身体介護や支援を必要とする状態と言えるでしょう。介護予防サービスを適切に利用することで、状態の維持や改善も期待できます。 |
1-2. 要介護とは
要介護とは、日常生活を送る上での基本的な動作を自分で行うことが難しく、介護職などによる介護や支援がなければ生活が困難である状態を指します。身体機能や運動機能の低下が見られるほか、思考力や理解力の低下が見られるケースも少なくありません。
要介護は、介護を必要とする方の状態に応じて「要介護1」「要介護2」「要介護3」「要介護4」「要介護5」の5つの区分に分けられます。ここでは、要介護の区分における判定基準や、それぞれの区分における要介護者の状態のめやすについて確認しましょう。
要介護1 |
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要介護認定等基準時間が32分以上50分未満、またはこれに相当する状態と判定された場合に認定される区分です。日常生活における基本動作を行う能力が要支援状態からさらに低下し、入浴や着替え、歩行など日常生活の一部で部分的な介助を必要とする状態となります。 |
要介護2 |
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要介護認定等基準時間が50分以上70分未満、またはこれに相当する状態と判定された場合に認定される区分です。歩行や入浴、排泄など、日常生活全般において、部分的な介助を必要とする状態と言えます。 |
要介護3 |
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要介護認定等基準時間が70分以上90分未満、またはこれに相当する状態と判定された場合に認定される区分です。立ち上がりや歩行を自力で行うことが困難であり、日常生活のほとんどにおいて全体的な介助が求められます。また、認知症の症状がある場合も少なくありません。 |
要介護4 |
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要介護認定等基準時間が90分以上110分未満、またはこれに相当する状態と判定された場合に認定されます。立ち上がりや歩行を自力で行うことはほぼできず、食事や入浴、排泄などは介助・介護なしでは行えないケースがほとんどです。理解力の低下や認知症の影響により、意思疎通が困難な場合もあります。 |
要介護5 |
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要介護認定等基準時間が110分以上、またはこれに相当する状態と判定された場合に認定される区分を指します。寝たきりの状態であり、食事やおむつの交換、寝返りの介助など、日常生活のすべてにおいて介助・介護を必要としている状態です。 |
1-3. 要支援と要介護の違い
要支援2と要介護1は、いずれも要介護認定等基準時間が32分以上50分未満と判定された場合に認定される区分です。同じような認定基準となっていますが、要支援2と要介護1ではどのような違いがあるのでしょうか。
厚生労働省が示す基準によると、下記のような状態の場合は要介護1と判定される可能性が高いと考えられます。
◆要介護1と判定される可能性が高い状態
(1)状態が安定していない
今後、半年以内に介護を必要とする量が増加し、介護度の再評価・変更が必要になると考えられるケースでは、要介護1と判定される場合があります。脳梗塞や心疾患など、心身の状態が変動しやすい病気を発症した場合も、要介護1とされる可能性が高いでしょう。
(2)理解力の低下が見られる
認知機能や理解力の低下により、利用者が介護予防サービスを適切に理解し利用することが困難であると考えられる場合は、要介護1と判定される可能性が高まります。認知症の診断を受けている場合も、要介護1と判定される可能性が高いでしょう。
2.【介護度別】受けられる介護サービス
公的な介護保険サービスを受けるためには、要介護認定を受けて「介護を必要とする状態である」と判定される必要があります。受けられる介護保険サービスは、介護度の区分によって異なることに留意しましょう。ここでは、それぞれの介護度の方が受けられる介護保険のサービス内容について、介護度別に解説します。
2-1. 要支援1
要支援1の認定を受けた方は、状態の維持・改善や悪化予防を目的とした介護予防サービスを受けられます。
◆要支援1で受けられる介護予防サービス
訪問系 (居宅サービス) |
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通所系 (通所サービス) |
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宿泊系 |
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多機能型 |
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福祉用具 |
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なお、要支援1の方の場合、1か月あたりの介護保険支給限度額は50,320円(自己負担が1割の場合の自己負担額は5,032円)です。サービスの費用を考慮すると、週2~3回の利用が目安となるでしょう。
2-2. 要支援2
要支援2の認定を受けた方は、要支援1で利用できるサービスに加えて、地域密着型サービスも利用することが可能です。地域密着型サービスとは、市町村指定の介護事業者が提供するサービスであり、介護を受ける方が住み慣れた地域で生活を続けられるようサポートするしくみを指します。
要支援2の方の場合、1か月あたりの支給限度額は105,310円(1割負担の場合は10,531円)となります。週3~4回程度の利用が目安となるでしょう。
2-3. 要介護1
要介護1では、下記のような介護保険サービスを受けることができます。
◆要介護1で受けられる介護保険サービス
訪問系 (居宅サービス) |
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通所系 (通所サービス) |
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宿泊系 |
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多機能型 |
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入居系 (施設介護サービス) |
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福祉用具 |
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要介護1の方の場合、1か月あたりの支給限度額は167,650円(1割負担の場合は16,765円)です。1日1回程度の利用が可能となるでしょう。
2-4. 要介護2
要介護2の方では、要介護1の方が利用できる介護保険サービスを利用可能です
要介護2の方の場合、1か月あたりの支給限度額は197,050円(1割負担の場合は19,705円)です。1日に1~2回程度のサービス利用ができるため、訪問介護や通所による介護、ショートステイなどをうまく組み合わせて適切な支援を受けるようにしましょう。
2-5. 要介護3
要介護3と認定された方は、要介護2までの方と同様の種類の介護保険サービスを利用することができます。なお、特別養護老人ホーム(特養)の主な入居対象となるのも要介護3以上の方です。要介護2以下の方も要件を満たせば特養を利用できますが、基本的には要介護3以上の方を対象としていることを押さえておきましょう。
要介護3の方の場合、1か月あたりの支給限度額は270,480円(1割負担の場合は27,048円)となります。1日に2回程度を目安に介護保険サービスを利用できると考えられるため、介護を必要とする方や家族の状況に合ったサービスを組み合わせて活用することが大切です。
2-6. 要介護4
要介護4と認定された方も、要介護3までの方と同様の種類の介護保険サービスを利用できます。
要介護4の方は日常生活の基本動作を自力で行うことが難しく、意思疎通も困難であるため、自宅での介護は家族にとって大きな負担となる可能性があります。訪問系サービスや通所系サービスを利用しながら、ショートステイなどの宿泊系サービスも併用し、家族がレスパイト(息抜き)できる機会を設けることが大切です。
要介護4の方の場合、1か月あたりの支給限度額は309,380円(1割負担の場合は30,938円)となります。1日に2~3回程度を目安として、利用する介護保険サービスを検討しましょう。
2-7. 要介護5
要介護5と認定された方も、要介護4までの方と同様にほとんどの介護保険サービスを利用することができます。介護負担が大きく在宅介護が困難な状態であるケースも多いため、特別養護老人ホームをはじめとする入居系の介護保険サービスを利用する方も少なくありません。
要介護5と認定された方の場合、1か月あたりの支給限度額は362,170円(1割負担の場合は36,217円)となります。1日に3~4回程度の利用を念頭に置いて、訪問系や通所系のサービスをうまく組み合わせたり、施設への入居申し込みを早めに行ったりするなどの対応をとりましょう。
3. 介護度はどのように認定される?
介護予防サービスや介護保険サービスを利用するには、要介護認定を受けて介護度の判定を受ける必要があります。日常生活を送る上で支援が必要となったり、日常の基本動作などで心配事があったりする場合には、居住地の市区町村窓口に要介護認定の申請を行いましょう。
ここでは、要介護認定の申請から実際に介護サービスを受けるまでのプロセスを解説します。各段階で行うべきことや用意するものなどを確認し、要介護認定から介護サービスの利用開始までの流れをスムーズに進めましょう。
3-1. 要介護認定の申請
要介護認定の主な対象者は、介護・支援を必要とする65歳以上の高齢者となります。ただし、例外として、国が定める16の特定疾病であると診断された40~64歳の方も介護認定申請を行うことが可能です。
要介護認定を申請するためには、要介護認定を希望する方が住む市区町村の福祉窓口や、居住地を管轄する地域包括支援センターに必要な書類を提出する必要があります。自治体のホームページなどを確認した上で、下記のような提出書類を準備しておきましょう。
◆要介護認定の申請に必要な書類
- 介護保険 要介護認定・要支援認定申請書
- 介護保険被保険者証(原本)※40~64歳の方は医療保険被保険者証
- マイナンバーカードや通知カードなど、個人番号(マイナンバー)が確認できる書類
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
また、本人や3親等内の家族、申請代行事業者以外の立場にある方が代理人として申請書類を提出する場合、委任状や代理人の本人確認書類も必要です。
3-2. 認定調査
介護認定調査とは、要介護認定の申請書の提出を受けた市区町村が行う訪問調査のことです。自治体から派遣された職員(認定調査員)が、本人や家族に対し、74項目の基本調査および特記事項からなる聞き取り調査を行います。
基本調査では、身体機能や生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応といった調査項目をもとに、介護を必要とする方の心身状態をチェックします。過去14日間に受けた医療的ケアや、生活環境・家族の状況、現在の施設・サービスの利用状況なども確認されるため、情報を整理しておきましょう。
認定調査当日は、本人だけでなく家族も立ち会うことが大切です。現状を正直に伝え、困っていることや心配なことも遠慮なく報告するようにしましょう。
3-3. 審査判定
審査判定とは、認定調査の結果を受けて、申請者がどの程度の介護を必要とするか客観的に判断するために行われる判定のことです。審査判定にはコンピュータによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定があります。
介護認定審査会は、医師や薬剤師、看護師、保健師、介護福祉士、社会福祉士といった医療・保健・福祉分野の専門職で構成される組織です。二次判定では「一次判定の結果」「主治医意見書」「認定調査での特記事項」の3点をふまえて、認定する介護度について介護認定審査会のメンバーが公平・公正に議論します。
二次判定で出された判定結果は、申請日から30日以内に通知されます。介護度認定が下りた場合は、「要介護認定通知」「認定内容が記載された介護保険被保険者証」が郵送されるので、忘れずに受け取るようにしましょう。
3-4. 介護(介護予防)サービス計画書の作成
要支援・要介護と認定された方が介護保険サービスを受けるためには、「介護(介護予防)サービス計画書(ケアプラン)」を作成してもらう必要があります。地域のケアマネジャー(介護支援専門員)や地域包括支援センターの担当者と相談しながら、利用サービスを検討し、ケアプランに要望を反映してもらいましょう。
ケアプランが交付され、利用する本人や家族がサービス事業者と契約したら、介護保険サービスの利用を開始できます。ケアプランは定期的な見直し・更新が行われるものであるため、新たな課題や不安・心配事などが生じた場合は、遠慮せずケアマネジャーなどに相談することも大切です。
まとめ
介護度とは、介護を受ける方がどのくらいの介護量を必要としているかを表すものです。介護度は要支援・要介護に分かれており介護を受ける方が自立した生活を送れるかどうか、どのような介助を必要とするかによって認定されます。
介護度によって、介護保険の支給限度額や受けられるサービスが異なります。自宅で過ごし続けたい場合は訪問介護やデイケアの利用、自立した生活が難しい方は老人ホームへの入居を検討してもよいでしょう。